ちり山つも美の部屋

塵も積もれば 道は開ける

【文系こそ楽しめる理系ミステリ】森博嗣『すべてがFになる』

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

巷では理系ミステリーとして認識されている作品。
作者の森博嗣氏が工学部助教授をしているだけあって、プログラミング等の理系の専門用語が多々出てくる。そこだけを取り出せば、素人には理解できない難解な箇所もあるが、大方スルーしても作品自体十分楽しめる。

全体的に、冷淡で無機質な印象を受ける。
主人公犀川の思考順路は、無駄なものを排除し切った、非常にシンプルなもので、論理的な筋道が通っているかを重視しているからだろうか。
そこを面白いと思えるかどうかなのだろう。
理系と縁のない私だが、その冷たく機械的な発想には多々魅力を感じた。
自身にない考え方への憧れなのだろう。

理系、文系と思考が大別されるのは事実だと感じた。
犀川のような思考回路は私にはできない。
答えを提示されて初めて考え至ることが少し悔しい。
ただのミステリー小説に終わらず、感情さえも消してしまう、そんな料簡を目撃することで、自身の知的な部分が表面化したような錯覚を味わえる面白さがある。
そういった意味で、文系の人こそ楽しめる作品なのではないだろうか。

車輪の下で(ヘルマン・ヘッセ)【3分で解説】 

 

 

車輪の下で (光文社古典新訳文庫)

車輪の下で (光文社古典新訳文庫)

 

 

 車輪の下で」

作者:ヘルマン・ヘッセ

訳:永松美穂

出版社:光文社古典新訳文庫

 

幾度となく挫折してきた、古典文学に挑戦したくて、読みやすそうなものを漁ってました。

そこで、「光文社古典新訳文庫」なる、現代語に著し直されたレーベルを発見。僥倖。
 
いろいろ見た中で、かなり興味の持てる内容っぽかったので、本書を選びました。
元優秀な生徒のなれの果ての物語と聞いて、僅かながら自分に近いものを感じ、手にとって見たものの、その凄絶なラストに読むのを止めてしまいそうに。
読後の沈痛な気分は、しばらく消えませんでした。
 
 
●物語(完全なるネタバレ)●
天才的な勤勉さを持ち、多くの人の期待を背負った少年、ハンス・ギーベンラート。
彼は釣りや散歩などの少年らしい愉しい時間を、全て勉学につぎ込みながら、トップの成績で州試験に合格し、憧れの神学校に進学する。
 
試験終了後の数週間の休暇に、久々の癒しを求め、釣りをしてのんびり過ごそうと計画していたハンス。
だが、牧師や校長の勧めで、毎晩夜遅くまで歯を食いしばりながら机に向かう生活に戻されてしまう。
父はというと、自分以上の人間に我が子が育つという、平凡な理想を通してしかハンスを見ることができず、彼の心を考えようとはしなかった。
唯一、靴屋の親方だけは、ハンスの心身を思い、安息の時間が必要と伝えるが、ハンスはそれを息苦しく感じるだけだった。
 
神学校に入学したハンスには、ハイルナーという親友ができる。彼は知性に溢れ、独自の考えを持ち、他の生徒とは一線を画していた。
ハイルナーとの出逢いで、ハンスはそれまで自身が信じてやまなかったもの、勉学こそが全てであり、正義であるという考えに疑問を持つようになる。
ハンスはハイルナーとの友情を誇りに思い、慈しむと考える一方で、それが重荷にもなっていた。
ハイルナーはほとんど毎日、ハンスの部屋にやってきては勉強の邪魔をした。ハンスは授業についていくため勉強時間を二倍にしたが、自分を鼓舞しなくては集中できなくなっている自分に不安を覚えていた。
ある日、ハイルナーが暴力沙汰を起こし、謹慎処分を受ける。それは非常に重い烙印であり、自身の評判を下げたくなかったハンスは、ハイルナーから逃げてしまう。ハイルナーは落胆したが、罪悪感にかられたハンスは謝罪をし、二人は和解。勉強以外に大切なものを知らなかったハンスだったが、ハイルナーの存在が、彼に友情の大切さを教えた。
 
その頃からハンスは授業中にぼーっとしたり、居眠りをしてしまうようになり、彼自身、記憶の衰えを感じはじめる。
 
その後、ハイルナーは「天才旅行」と称して、学校から逃亡し、自分の能力を誇示しようとしたが、そのまま退学になった。
教師たちはハンスも共謀していたと考え、彼を異端者扱いするようになる。
勉強のできなくなったハンスを非難し軽蔑する教師たち。
彼らはちっぽけで野蛮な虚栄心をハンスに押し付け、その結果、ハンスは弱くて力ない微笑を浮かべることしかできなくなった。
 
全てを消失し、精神疾患と診断されたハンスは、帰郷することになった。彼の中にあった見栄っ張りな希望がようやく消えていった。
 
多感で脆い少年時代に、ハンスは子どもらしい愉しみを奪われ、強迫観念に勉強をさせらてきた。それがなくなった今でさえ、ふとした瞬間にギリシャ語の文法が頭の中をぐるぐる回り、ハンスの心を傷つけ、罪の意識があの微笑みを浮かばせた。
ハンスは次第に死に憧れを持つようになる。死に場所を探すことで心が安らぎ、いつでも死ぬことができるという優越感が快楽となって、苦しい想像の世界から彼を解放した。
 
しかし、若さという静かな粘り強さが彼から希死念慮を消失させた。
父の勧めで機械工になったハンスだが、惨めさや屈辱を感じ、これまで何のために多くを犠牲にしてきたのかと憤る。しかし、次第に仕事に慣れ、仕事場での仲間意が深まる中で、肉体労働者に対しての”惨めな俗物"という印象は変わっていき、誇りと輝きを持った尊敬の対象となった。
 
だが、それでもハンスはときどき絶望の世界を求めてしまう。
同僚に誘われ、仲間と飲みに行った帰り、泥酔したハンスは過去のフラッシュバックに襲われる。
恥。自己非難。
それらから、ハンスはとうとう逃れることができなかった。
 
翌日、溺れ死んだハンスの遺体が、家に運ばれた。
なぜ彼が川に落ちたのか、誰も分からなかった。
 
 
●感想●
ハンスは最初から最期まで、親や教師たちから受けてきた、勉学至上主義教育から逃れることがでませんでした。
ヘルマン・ヘッセは、当時のドイツの教育方針・理念に問題提起し、本来あるべき子どもの姿の対をなすものとして、ハンスを描いたのだと考えられます。
訳者の永松氏の解説にあるように、時代も国境も超えて、この物語が世界中で読まれているのは、今日でも教育の在り方が問われ続けているからにほかなりません。
いつか私が子を持つ親になる日がきたとき、子どもにどう触れるべきか、どういう親であるべきか、自分なりの答えを見つけるのを手伝う役割を、本書は果たしてくれると感じました。
車輪の下で (光文社古典新訳文庫)

車輪の下で (光文社古典新訳文庫)

 

 

ラブソング【KiLLiNG ME】歌詞解釈(女性目線)

ロックバンドSiMのキラーチューン【KiLLiNG ME】のわたし流和訳と解釈。
 
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1.
(some one) please cut off my wings
(trash it) with my pent-up feelings
I don't want to fly in the air with bleeding 
because I'm not the only one
 
だれかわたしの羽根を切りとって   
積もり重なる気持ちと一緒に捨ててよ
血を流しながら飛びたくないの
だってわたしだけじゃないんでしょ
 
 
2.
Plug me in, I'm tired of dreaming
Light "something",it makes me fine
 
わたしに明りを灯して
夢をみるのはもううんざり
”なにか”を照らして 
それで十分なの
 
 
3.
When I'm down, your kissing makes me feel alive
When I'm down, your smell makes me feel alive
Oh baby, stay with me
Feel like I'm sinking down into the ground
You're killing me
 
どん底にいると あなたのキスがわたしを救ってくれるの
あなたの匂いが生きるちからになるの
ねえ、一緒にいて
地面に沈んでいくみたい
あなたって最高ね
 
 
4.
(someone) calls my name again
(don't push it) you're just waiting in vain
Because I'm flying with my girl, just go away
 
だれかがわたしを呼びつづけてるわ
やめて 待ったって無駄なの
だってわたしは愛する人と飛びつづけてるんだから
邪魔しないで
 
 
5.
When I'm down, your kissing makes me feel alive
When I'm down, your smell makes me feel alive
Oh baby, stay with me
Feel like I'm sinking down into the ground
You're killing me
 
どん底にいると あなたのキスがわたしを救ってくれるの
あなたの匂いが生きるちからになるの
ねえ、一緒にいて
地面に沈んでいくみたい
あなたって最高ね
 
 
6.
Plug me in, I'm tired of dreaming
Light "something",it makes me fine
 
わたしに明りを灯して
夢をみるのはもううんざり
”なにか”を照らして それで十分なの
 
 
7.
It's already 4:19 p.m
I'm ready to set fire to you
I want you know more about you 
Feeling of someting makes me feel so alive
 
もう4:19ね
そろそろあなたに火をつけてもいいわ
もっとあなたを知りたい
そんな気持ちがわたしを生きた心地にさせるの
 
 
8.
When I'm down, your kissing makes me feel alive
When I'm down, your smell makes me feel alive
Oh baby, stay with me
Feel like I'm sinking down into the ground
You're killing me
 
どん底にいると あなたのキスがわたしを救ってくれるの
あなたの匂いが生きるちからになるの
ねえ、一緒にいて
地面に沈んでいくみたい
あなたって最高ね
 
 
―END―
 
 
 
結論からいうと、この歌は揺れ動く不倫女の心を巧みに描写しています。
 
1.
あなたへの恋心を忘れたい。
わたしが一番じゃないことは分かってる。
このままあなたといてもわたしは傷つくだけ。
 
二号は苦しいだけ。理性的な、まっとうな考えです。
 
 
2.
あなたは夢の中の存在。
夢からわたしを目覚めさせて。
 
現実を見なきゃいけないと気付いたわけです。
それなのに・・・
 
 
3.
あなたの唇の感触が、シャツに染みついた匂いが、わたしは忘れられない。
あなたと一緒にいるのは、身動きのとれない泥沼にはまっていくのと同じ。
それでもただただ側にいてほしい。
 
泥沼に両足を突っ込んでます。
 
 
4.
だれかがわたしに忠告してる。
 
たぶん白い天使、理性の天使でしょう。
 
でもわたしの耳には届きません。
 
 
5.
理性ではわかっているけど・・・
 
けっきょく黒い天使が勝ちました。
 
 
6.
でもやっぱり気付きます。
やっぱりあなたは夢の中だけの儚くて遠い存在。
 
 
7.
4時19分。
彼の腕の中で目覚めて、帰らなくちゃと焦ってはみたけど、彼の寝顔をみたらあと30分だけ側にいたいって思った瞬間。
一晩では彼を知るのに短すぎました。
 
職場まで距離のあるOLでしょうか。
 
 
8.
あなたの存在がわたしの生きる糧なの。
先のことなんてどうだっていい。
ただあなたのそばにいさせて。
やっぱりあなたって最高。
 
 
―END―
 
 
プレボーイに遊ばれている悲劇の女の歌です。歌謡曲にありそう。
でも本人はこれっぽっちも悲劇だとはおもってません。
恋は盲目です。
 
When I'm down, your kissing makes me feel alive
When I'm down, your smell makes me feel alive
はなかなか的を射ていると思います。
キスより匂いのほうが、より強烈にfeel aliveするってことです。
(それとも、キスなんて匂いを嗅ぐ〔誰にでもできる〕ことと変わりない程度のものだ、という意味でしょうか。)
経験上、キスの感触を覚えていた試しはありません。
あ、この感触元彼と似てる・・・みたいなのはないです。
経験の多い方ならわかるのかもしれませんが。
でも、匂いなら覚えてます。
同じ香水をつけている人とすれちがって、甘酸っぱい気持ちになった経験をお持ちの方も多いのでは。
 
stay with me
Feel like I'm sinking down into the ground
どんな気分なんでしょうか。
weではなく、あくまでIなので、わたし一人が沈み込むような、重苦しい気分になる。
泥沼に沈む背徳感。
それってなかなか心地いいものなもかもしれません。
彼女は最後の最後まで抜け出せなかったんですから。
  
ここまで書いておきながら、この曲はただのラブソングではないそうです。
 
 
―――――――――― 
 
の曲がただのラブソングでない事に気付いた全ての仲間達に栄光を。
わかるやつだけにわかればいい。
作ってみたら以外にキラーチューンぽくなってレコーディングで化けた曲!
リードトラック!
歌詞は、一見するとただのラブソングですが。

俺がそんなん書くわけないだろwwwww
つーことで。意味深な曲なんですよ実は。
歌詞の中とMVヒントは散りばめてある。
色々考えてみて!
 
―――――――――――
 
と、ボーカルのMAHさんはブログで言っています。
MVは何十回と見たんですが、わたしは仲間に入れてもらえませんでした。
 
 
回答かは分かりませんが、それらしきブログをみつけました。
ここで言われてるのは、恋人ではなくドラッグに対しての歌ではないか、という話です。
 
ドラッグだと考えれば、キスの次に香りがくるのは納得です。
Because I'm not the only one
ただ、ドラッグに対して私が唯一の存在ではない、とは何なのか。
ここだけ主語が変わって、私にとってはドラッグの変わりはいくらでもある、という意味なのか。どちらも違和感があります。
 
一番思うのは、MAHさんがドラッグにfall in love的な歌を歌うイメージがないことです。そんな自分をカッコイイなんて思うような方でもないし、アンチテーゼとして歌ってるのでしょうか。
私には、もっと他の意味が隠されているようにしか思えません。
それが分かれば苦労しないのだけど。
 
 
蛇足ながら、この曲の歌詞をちゃんと読もうと思ったきっかけの動画があります。
中国でバンド活動をしているカップルが、結婚式でKiLLiNG MEを歌ってるものがありまして。
なかなか感動的なウエディングです。

 


Killing me (by SiM) cover by Bride & Groom at rock ...

 

 

おしまい。